ぼくらの七日間戦争 宗田理著(角川文庫)ライトノベルの枠におさまらない痛快さ。

ぼくらの七日間戦争表紙 ドラマ

こんにちわ、MARCYです。小松左京さんの「日本沈没」がネットフリックスでアニメ化されることを紹介しましたが、宗田理さんの「ぼくらの7日間戦争」も、今アニメ映画として公開されていますね。この作品もなんと35年も前(1985年)に書かれた小説です。

1985年は長男が生まれた年で、MARCYは25歳だったと思いますが、初めてこの「ぼくらの七日間戦争」を読んだときは、むしろ大人が読むべき小説だなと強く感じました。なぜなら、この小説のテーマが、こどもを”良い大人”にするための教育をはじめとする社会の風潮に対する強烈なアンチテーゼだと感じたからです。

1988年にいちど宮沢りえさん主演で実写映画化されています。また今回のアニメ版は実際に見ていないので詳しいことは言えないのですが、予告編をみるかぎりでは、主人公たちは高校生ですね。そして最初の七日間戦争を知る人物として、中山ひとみという登場人物(原作では料亭の娘、物語の中で大きな輪役割を果たす)が、いるということは、もしかして続編?MARCYも映画見てみようかな。

1988年の実写版も今回のアニメ版も原作と違うのは、立てこもるこどもたちの中に女の子がいることです。原作では、中学校の一クラス全員の男子20名がたてこもり、女子はひとりもいません。この数の違いも原作と違うところですね。

ですので、映画を見た方もこれから見る予定の方も、ぜひ一度原作を読むことをお薦めします。原作で宗田さんが書きたかった深いテーマは、映画とはまた違った感動を得られると思うからです。

いつものようにネタバレはさけますが、原作で印象深いのはこどもたちが自分の親を含む、大人の世界に対していだいている不信感や絶望です。けれども、それが暗い描写になるのではなくて、中学生としての明るさと若々しさで、とんでもないアイディアで反旗をひるがえす痛快さは、特筆ものです。

1985年当時、主人公の中学生たちの両親は、70年安保を闘った全共闘世代です。日大全共闘や東大全共闘、神田カルチェラタン(解放区)や東大の時計台放送に少なからずシンパシーを抱いた世代なんですね。

MARCYは全共闘のころには、小学校の5年か6年だったと思います。ませたこどもだったので、東大安田講堂の陥落のときの最後の時計台放送をテレビのニュースで見たときに、言い知れぬ感動と胸騒ぎを覚え「いつかは俺も!!」と思ったものでした。

しかしその後の学生運動は迷走を続けます。全共闘運動が解体し、各セクトは過激化の一途をたどり、あさま山荘事件やよど号ハイジャック事件などを引き起こして、いつの間にか市民の共感を得られなくなっていきました。

MARCYが高校に入学したころには学生運動は影も形もなく、無気力、無感動、無節操、無関心、無責任の5無主義が吹きあれ、政治的な発言などをすると「ダセー」と一言できりすてられるような時代になっていましたね。

MARCYは全共闘運動とは世代が違い、また就職してからの職歴でも組合活動の経験も全くありません。思想的にはどちらかというと右寄りだという自覚があります。それでも、この「ぼくらの七日間戦争」のこどもたちには深い共感を覚えます。

いつの時代にでもこどもは、いずれ私たち大人の世代を超える存在であるべきだと思うからです。ですからこどもを大人の都合だけで、今の社会の枠に無理やりはめ込んでしまう、つまり大人にとって都合の良い”良い子”をつくるだけの教育は間違っていると感じます。

理想論かもしれませんが教育という行為は、こどもたちが今の国や社会の枠組みさえも変えていける存在であるとの前提のもとで、行われるものであって欲しいと思うのです。その意味でこの小説には、示唆にとんだ言葉が数多く出てきます。

「解放区」の廃工場に住んでいる浮浪者、瀬川老人と子供たちが出会ったときの会話ですが

「えらい奴が、立派なことを言うときは気をつけた方がいい」

「じゃ、総理大臣が言ったら」

中尾が聞いた。

「あぶねえ、あぶねえ。政治家が子どものことに口出しして、ろくなことはねえ。ほら、最近言ってるだろう。少女雑誌に有害なのがあるとか」

思わずニヤリとしませんか?また、解放区のリーダーである相原徹の両親の会話

「そうかなあ。君は安田講堂が陥落するときの、最後の放送をおぼえているか?」

「覚えているわ。われわれの闘いは決して終わったのではなく、われわれにかわって闘う同志の諸君が、ふたたび解放講堂から時計台放送を再開する日まで、一時この放送を中止します」

中略

「もしかしたら、あの子どもたちが、おれたちにつづく連中なのかもしれない」

子どもたちはかっての全共闘のように、大学や政治に対する不満をぶつけているわけじゃありません。しかし、親の思う通りにコントロールされることや、社会的正義に反することに目をつむる”大人の態度”に疑問を持ち、いきどおりを感じています。

物語は、解放区にこもった子どもたちの7日間の生活にとどまらず、誘拐された友だちの救出作戦や、談合や汚職と言った社会的な不正義を卓抜な知恵とそれぞれの特技を活かした技術力で、白日の下にさらしてしまったり、息を持つかせぬ展開で進みます。

はたして子どもたちの解放区の顛末はどうなるのでしょうか?累計発行部数2000万部を超える世代を超えて親しまれてきた、大人が読んでも楽しめる青春小説です。とくに、全共闘の時代を知る人には、ある感慨をもって読むことが出来ると思います。MARYのお薦めです。

また、1988年の映画化された実写版は、この映画がデビューとなった宮沢りえさんが、初々しいですよ。ファンの方はぜひご覧ください。アマゾンプライム会員は、今なら無料です。

 

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