パステル学園大乱戦 清水義範著(角川文庫)名古屋出身のパスティーシュの第一人者初期 ジュブナイル小説の傑作

ライトノベル

こんばんわMARCYです。久々の乱読日誌ですね。MARCYの自分史BLOG第7回で書いたのですが、名古屋に行ってきました。高田崇史さん流の神社の見方で熱田神宮を参拝して、熱田も怨霊なのか?と、未読だった高田先生の「神の時空」シリーズを読みはじめました。

その合間といってはなんですが、休憩がてらに軽い読み物をと考えたときに、名古屋からの連想で清水義範さんの「パステル学園大乱戦」を再読しました。清水先生といえば、いわゆるパスティーシュ小説の名手です。

そして、この「パステル学園大乱戦」は、ジュブナイル小説の名作でSF的、伝奇的な要素も持ったとても読みやすい高校青春小説なんです。残念ながら先生の地元、名護屋が舞台ではありませんが、愛すべきキャラクターとして、名古屋出身の大須先生が出てきますよ。

また余談ですが、表紙の挿絵もMARCYが大好きな漫画家、いしかわじゅん先生のかわいらしいイラストでとても気に入っています。石川先生の描く女の子はほんとに可愛いですよね。

清水義範先生の略歴(ウィキペディアから引用)

1947年(昭和22年)、愛知県愛知郡天白村(現名古屋市天白区)生まれ。2歳のときに、名古屋市西区笠取町に移住した。名古屋市立庄内小学校、名古屋市立名塚中学校、愛知県立名古屋西高等学校、および愛知教育大学教育学部国語学科卒業。

中学時代からSFファンで、同人作家として自身でSF同人誌を発行。半村良の面識を得て、大学卒業後、半村の勧めで上京し半村に師事。1977年(昭和52年)からソノラマ文庫を活動の場とし、『宇宙史シリーズ』などSFを中心に多数のジュブナイル作品を発表した。

その後、短編集『蕎麦ときしめん』では司馬遼太郎の文体で猿蟹合戦を叙述したり(『猿蟹の賦』。猿蟹合戦ネタでは他に丸谷才一の文体を用いた『猿蟹合戦とは何か』も発表している)、『日本人とユダヤ人』やそれをめぐる状況のパロディとなっている表題作など様々なパスティーシュの手法が用いられている。以降この手法を用いた短編を書き続け、その数は数百編に達する。この他にもユーモア色の濃い推理小説のシリーズを複数手がけたり、自伝的な青春小説シリーズを執筆している。

また、加藤清正と北政所が名古屋弁で会話するショートショート『決断』を書いて以来、名古屋弁など名古屋を前面に押し出した「名古屋もの」と呼ばれる作品を多数著し、大須演芸場で「名古屋弁を全国に広める会」の功労賞を受賞。名古屋名誉市民になった。

「パステル学園大乱戦」のあらすじ(ネタバレなし)

主人公の二重丸大介(あだ名はペケ)は、横浜にあるパステル学園の二年生。中間色の人間を育成しようというユニークなコンセプトを持つ私立高校のパステル学園に、ある日従妹の神藤麻衣子が転入してきます。

麻衣子は、茶道の水月流家元である両親と大阪に暮らしていたのですが、両親の仕事の都合で横浜に引っ越してきたのでした。麻衣子自身も茶道の師範の資格を持っていて、転入したばかりのパステル学園で、茶道部を設立することになります。

茶道部の顧問には、男子生徒のあこがれの的である真田”モンロー”先生が就任。早速、部員を募集するのですが、入部してきたのは5名の男子生徒だけで、女子生徒はひとりもいなかったのです。しかも入部した5人は、ひとくせもふたくせもあるユニークな面々ばかり。

一人目はパステル学園柔道部のエースである南谷幹夫、その入部の弁は

先生。人間、スポーツだけをやっていては知らず知らずのうちに片寄ってしまいます。おれは文武両道を極めたいのです

大介の感想は

うわー。面白い奴が来たもんだ

ですが、残りのメンバーは、学園一の悶々スケベで大介の親友の堀真琴。堀の腰ぎんちゃくでめちゃくちゃ存在感の薄い空気のような馬場一郎。さらには学園一の秀才、川端俊明。最後にニヒルで無口な鏡味悟で南谷を加えて計5人。しかもみな大介と麻衣子と同じ2年生でした。

男ばかりの部員5名とマネージャーの大介。そして部長の麻衣子を併せた茶道部7名のメンバーは、学園に巣くう番長グループに目をつけられてしまいます。番長の杉浦やナンバー2の武田を中心にするパステル学園の番長グループは、暴力団とのつながりも噂される凶悪集団でした。

麻衣子が番長グループに拉致されたときに、茶道部のメンバーはみな不思議な体験をします。

我を助けよ

戦士ども集まりて我を助けよ

麻衣子のメッセージが頭の中で響き渡りました。メンバーは麻衣子に危機が迫っていることを直感し、迷うことなく拉致された麻衣子が連れ込まれたマンションに集結。そこには暴力団員と番長グループの面々が・・・麻衣子危機一髪!!

姫を守る忠実な戦士となった茶道部のメンバーは、ある女子生徒の覚せい剤大量摂取による死亡事件に、番長グループが絡んでいることを知って立ち上がります。凶悪集団と対決するメンバーの運命は?そして彼らに秘められた能力とは?

名古屋弁丸出しでダサいけど、真に生徒を思う大介の担任、大須宇伊郎先生の真田モンロー先生への恋心などの小ネタも絡み、読みやすい物語は289ページの中編で一気読みも全然苦になりません。

残念ながら現在は絶版になっているようですが、アマゾンなどで中古で入手可能です。楽しく読めるMARCYのおすすめです。

MARCYが感じたこと

近年の著作は読んでいないのですが、清水義範さんはMARCYがとても好きな作家のひとりです。初期のころのパスティーシュ小説では、「国語入試問題必勝法」や「永遠のジャック&ベティ」などが、まさに捧腹絶倒の名作ですね。とにかく笑えます。

名古屋ネタですと「金鯱の夢」が絶対的におすすめです。秀吉の嫡子、英正が徳川家康と連合を結んで関ヶ原の戦いに勝利し、名古屋に幕府を開くパラレルワールドの物語。名古屋幕府260年の歴史で日本の公用語は名古屋弁に!!名古屋愛にあふれた傑作ですよ。

さて、「パステル学園大乱戦」を読んで感じることは、とにかく読みやすく最後まで悩むことなく読み通せる小説だということです。小説を読む以上は、作者の意図を読み取ったり何らかの教訓を感じたりしなければ、損をした気分になる人もいるかもしれません。

でもたまにはとにかく読みやすくて、負担にならない読書をしたいときもありますよね。そんな時に読んで欲しい小説です。ぜったい面白いこと保証します!!また軽いと言っても読みごたえのあるアクションシーンもありますし、南総里見八犬伝を彷彿とさせる伝奇的な匂いも感じさせる物語です。

清水先生らしい読者サービスにあふれた小説だと思いますが、残念なのは続編を予感させる終わり方をしているのに、30数年たっても続編が出ていないこと。清水先生、ぜひ続編を執筆してください。ファンはあきらめていませんよ。

こんな人におすすめ

清水義範さんのファンの人

とうぜんですが、清水先生のファンで未読の方には絶対的におすすめです。清水先生は初期のころにかなりジュブナイル小説も書いていますが、「パステル学園大乱戦」は、その中でも熱烈なファンが多い名作ですので、未だの方はぜひお読みください。

ライトノベルや青春小説の好きな人

主人公の麻衣子の可愛らしさや、茶道部のメンバーが麻衣子”姫”を守る戦士に変貌するカッコよさもこの小説の読みどころです。

舞台は高校の青春小説ですが、SFっぽい設定や伝奇的な謎を感じさせる要素もありながら軽いタッチで読みやすいので、ライトノベルや青春小説、学園小説のファンの人にはおすすめです。

名古屋弁の出てくる小説に飢えている人

「パステル学園大乱戦」の舞台は、名古屋ではなく横浜ですが、主人公、二重丸大介の担任である大須宇伊郎先生がバリバリの名古屋弁で登場します。名古屋を愛し、名古屋弁の出てくる小説に飢えているあなた。そうあなたにぴったりの小説ですよ、MARCYのおすすめです。

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