黄泉がえりagain 梶尾真治著(新潮文庫)

黄泉がえりagain表紙 SF

梶尾真治さんの「黄泉がえりagain」の紹介をします。1999年に出版され、2003年に草彅剛と柴崎コウ主演で映画化された前作「黄泉がえり」から20年ぶりの続編です。

梶尾真治さんは、やさしいSFの名手として知られています。MARCYは全作読んでいるわけではないのですが、それでも梶尾さんの作品に流れる情感豊かなやさしさは、とても印象に残っています。

さて、「黄泉がえりagain」ですが、熊本大地震から2年後、前回の黄泉がえりの終息から17年後にふたたび熊本に黄泉がえり現象が発生します。今回の黄泉がえりは、なんと熊本城を築いた加藤清正が甦ったり、恐竜マニアの少年の想いから恐竜が甦ってきたりと、とんでもなくパワーアップしていたのです。

17年前に黄泉がえり現象を体験した熊本市では、行政をはじめとして冷静な対応を進めます。身近な人が甦ってきた人たちもすなおに喜びますが、前回同様に甦った人たちがある時点で一斉に姿を消してしまわないかと不安を感じていました。

「黄泉がえりagain」では、前回の黄泉がえりでただひとり消えずに残った相良周平の娘、相良いずみが、重要なキーマンになっています。なぜなら、黄泉がえり現象の根源である「彼」の力を宿した父親の相良周平と母とのハイブリッドだからなのです。

甦った人とその身内との群像劇と、復興のさなかにある熊本を襲う危機に、敢然と立ち向かう”黄泉がえり”たち。そしてその中心になるのは、ハイブリッドである相良いずみと熊本復興の希望となった加藤清正公だったのです。

前回の黄泉がえり現象をつぶさに追った新聞記者(現在は退職してフリーのライター兼編集者)の川田平太が今回も物語の語り部として、また身内に黄泉がえりを抱える当事者として登場しますが、彼のしあわせなエピソードも読みどころのひとつですね。

著者の梶尾真治さんは熊本在住の小説家で、熊本大震災を現地で経験しています。「黄泉がえりagain」は、梶尾真治さんにとってまさに書かなければいけなかった物語だったのだとMARCYは思いました。

ネタバレになりますので詳細には触れませんが、今回の黄泉がえりは、前回とは違う結末をむかえます。梶尾真治さんは熊本の復興の希望となる祈りをこめて、「黄泉がえりagain」を書いたのではないでしょうか?

もし前作を読まれていない方は、できれば前作から読んで欲しいですね。本作の冒頭で前回の黄泉がえりの顛末が語られますので、本作だけでも楽しめることは確かです。

でも、前作から読むことによって「黄泉がえり」「熊本大震災」「黄泉がえりagain」が、まるでリアルな時系列で繋がるドキュメンタリーの様に感じられるとMARCYは思ったんですよ。

いずれにしろ、梶尾真治さんの持ち味である優しさとユーモアにあふれたSFである「黄泉がえり」シリーズを読んで損はありませんよ。そして、時間があれば2003年の映画「黄泉がえり」もお薦めです。小説とはかなり違う部分もありますが、MARCYは好きでした。

残念ながらアマゾンプライムビデオやU-NEXTでは見れませんが、レンタルビデオでは普通に見れます。主演の草薙君の哀愁あふれる名演がMARCYには印象的でした。ルイ(柴崎コウが演じました)が歌った劇中歌「月のしずく」もヒットしましたね。

 

 

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