エクサバイト 服部真澄著(角川文庫)近未来の情報小説!!見たものすべてを記録するヴィジブル・ユニットが描く未来とは?池上彰さんの解説も。

エクサバイト表紙 SF

こんにちわMARCYです。正月気分もそろそろ抜けて、仕事のエンジンも掛かってきたころでしょうか?MARCYも今年から以前勤めていた会社に、週の半分はお手伝いに来ています。

久々の定時出社に緊張しながらですが、若い人たちと一緒に仕事をするのは楽しいですね。こちらの気分まで若返るような気がしていますよ。

さて、今回は服部真澄さんの「エクサバイト」を紹介します。

服部真澄さんの略歴「BOOK著者紹介情報」より

服部真澄
1961年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒。処女作は95年、『龍の契り』。97年『鷲の驕り』で吉川英治文学新人賞を受賞。以来、国際情報小説、歴史小説など幅広いジャンルの作品を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「エクサバイト」のあらすじ(ネタバレなし)

2025年。急速に進化した情報社会は、人々が超小型化したウェラブル・カメラを額に装着して、見たものすべてを記録するようになっています。このウェラブル・カメラはヴィジブル・ユニットと呼ばれ、その記憶容量はエクサバイト(10億ギガバイト)に達していました。

主人公のナカジこと鈴木央児(ナカジ)は、著名な人々の見る特異な世界を映像コンテンツとしてテレビ局に売り込むプロダクション「イエリ」の代表でありプロデューサーです。ヴィジブル・ユニットの扱いは個人情報保護の観点から厳しく規制されています。

例えば死亡後にその記録を見ることが出来るのは、故人に指名された相続者に限られます。コピーや相続者以外への譲渡は許されません。また、データの消去は本人が自由に行うことが出来ます。死後に公開する際や極端な例になりますが、殺人や強盗の犯罪を犯した場合でも、消去は自由に出来るのです。

ナカジのビジネスは、まだ生きている著名人、例えば美術史の専門家が、プロとしての見方で、美術品や工芸品を見る視点を編集・加工して映像コンテンツに仕上げていく新たなビジネス・モデルとなったのです。

個人情報を保護するために、厳しい規制が掛けられていヴィジブル・ユニットの使い方。しかし、そこに超大国アメリカ政府の陰謀が隠されているとしたら・・・また、製造メーカーのグラフィコム社にも重大な秘密があるとしたら・・・

物語は、エクサバイト商會のCEOであるローレン・リナ・バークから、ナカジへの申し入れから急展開します。エクサバイト商會は、故人のヴィジブル・ユニットのデータを譲り受け100年後に膨大な個人史の集積からなる「映像で見る世界史」を紡ぐことを発案したのです。

リナからの申し入れはナカジの人脈を駆使した著名人のデータを譲り受け広告塔とすることでした。ナカジはこのロマンあふれる新ビジネスに魅せられ、リナの申し入れを受けます。パートナーの二川伸太郎も喜びナカジの会社イエリの前途は洋々に見えました。

そこにヴィジブル・ユニットの製造メーカーであるグラフィコム社の横やりが入り、更には著名なカメラウーマンでナカジの生き別れた母クミコから、ナカジに遺贈されたヴィジブル・ユニットのデータの謎も絡み、物語は息もつかせぬ展開と思いもよらぬ結末を迎えます。

全ての人の個人情報が、余さず映像として記録される社会とは?「エクサバイト」は服部真澄さんの鋭い問題提起にあふれた、それでいて優れたエンターティメント小説。最後までわくわくしながら読める小説ですよ。残念ながら現在は絶版のようですが、アマゾンで中古は手に入るようです。

MARCYの感じたこと

服部真澄さんはMARCYの好きな作家のひとりです。著作全部を読んではいませんが、「KATANAプロジェクト」「鷲のおごり」「ポジ・スパイラル」などの近未来小説をとても楽しく読みました。

「エクサバイト」は、2008年の出版ですから時系列的にいうと、服部真澄さんの著作では少し古い部類になりますね。今回MARCYは再読ですが、その中で感じたことを少し書いてみたいと思います。

ウェラブル・カメラを装着することが当たり前となった世界。個人の見たものすべてが記録されていきます。一見、ヴィジブル・ユニットが作り出す未来はとても明るいものに見えるのです。

でもMARCYは、この世界に違和感を覚えますし、とても怖い世界だと思いました。MARCYは去年還暦を迎えましたが、まあ年齢の割にはパソコンやスマホをそこそこ使える方だと思います。このブログも自分で書いてますしね。

もともと通信業界の営業を15年務めた経験から、インターネットや携帯電話の変遷を身をもって経験してきました。初期の頃のインターネットや携帯電話のあり方を知るMARCYには、現在のように発展した様子には戦慄をおぼえる時がままあるのです。

グーグルやアマゾンをはじめとするいわゆるGAFAの存在によって、個人情報はいわば丸裸になってますね。もう10年もまえでしたが、NHKの特集番組で取り上げられたグーグルの社内で、グーグル帝国の設立が目標だと書かれていました。

多分、その時には笑い話や夢物語だと思った人(MARCYも含めて)が多かったと思うのですが、いまやそれはほぼ現実のものになっていますよね。人々の生活にGAFAの存在はなくてはならないものです。

ウェラブル・コンピュータやスマート・スピーカーは確かに便利なもので私たちの生活を豊かにしてくれます。しかしグーグルはスマート・スピーカーを通して声紋の収集を始めたそうです。これって怖くないですか?

エドワード・スノーデンが告発したアメリカ国家安全保障局(NSA)の盗聴システム、エシュロン。これにはアメリカの通信大手やコンピューターメーカーのデルが協力していることが暴露されています。

エクサバイトの物語は2025年から始まっています。現実の世界にはまだヴィジブル・ユニットは登場していませんが、この小説の示唆する”行き過ぎた監視”の社会は既に現実のものとなっているのではないでしょうか?

服部さんの小説にはハッピイエンドの物も多いですが、この「エクサバイト」は、ハッピイエンドには終わりません。テクノロジーの進化が、為政者の思うがままに操られる脅威を告発した、鋭い問題提起型の小説だとMARCYは感じました。

こんな人におすすめ

服部真澄さんのファンの人

当然のことですが、服部真澄さんのファンの人にはお薦めですね。ちょっと古い作品ですから、既に読んだ方も多いでしょうが、未読の方には絶対的にお薦めです。MARCY的には、「KATANAプロジェクト」と双璧の面白さだと思います。

リアルなSF小説が好きな人

宇宙を駆けめぐるスペースオペラや、超未来を舞台にしたSF小説も楽しいですが、時には「これってもしかしたら、本当にありうるかもしれない」と思わせるような、リアリティにあふれたSF小説を読んでみたい方。

服部真澄さんの小説を読みましょう。この「エクサバイト」や「KATANAプロジェクト」はまさにうってつけ。MARCYのお薦めです。

池上彰さんが好きな人

池上彰さんの解説が秀逸です。さすが鋭い読み方をされますね。MARCYよりも理解が深いと思います。池上さんが好きな方にお薦めします。但しネタバレがありますので、解説から先に読むのはやめましょう。

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