五分後の世界 村上龍著(幻冬舎文庫)著者が自負する最高傑作!!闘い続けるアンダーグラウンドの戦闘国家日本

五分後の世界表紙 SF

こんばんわMARCYです。1月ももうすぐ5日になりますね。今年は曜日の並びが良くて明日までお休みの方が多いと思います。MARCYものんびりした正月を過ごしていて、相変わらずの小説三昧です。

今回は、久々に再読した村上龍さんの「五分後の世界」を紹介したいと思います。多くの人にとって、村上といえば春樹さんだと思いますが、MARCYには村上といえば龍さんですね。不思議な事に春樹さんの小説にはまったくご縁がなくて実は一冊も読んだことがありません。

また、以前に漫画家の諸星先生をリスペクトしていると書きましたが、小説家の中では村上龍さんをリスペクトしています。すべての著作をカバーしているわけではありませんが、かなりの数を読んでいます。

その中でも「五分後の世界」は続編の「ヒュウガウィルス」と併せて、何度再読しても飽きない傑作ですね。中編で300ページに満たない手ごろな長さですので、村上龍さんの小説を読んだことがない方の入門編にもいいと思います。ぜひ、読んでみてください。

 

いつものようにネタバレはさけますが、第二次世界大戦で降伏せずにいまだに戦い続けているもう一つの日本国の話です。SF的にいうと平行世界あるいはパラレルワールドという設定ですね。その世界にまぎれこんだ小田切という一人の男性を主人公に物語は進行します。

小田切の腕時計がその世界では5分遅れていることから、「五分後の世界」なんですね。そのもうひとつの日本国は、沖縄戦、広島、長崎の原爆の後にさらに、小倉、新潟、舞鶴に原爆を受け、本土決戦を行ったのです。

そして、大日本帝国が実質上消滅し、北海道・東北をソ連が、本州と九州の大部分をアメリカ(国連軍)が、四国をイギリス、北九州の一部を中国に占領されました。日本の人口は総力戦での戦死、戦後の虐殺で2,300万人まで減少します。

そのころ、ビルマ、ニューギニアから帰還したわずかの将校団が長野に集結。新たな日本を起こすことを決意した彼らは地下に潜りました。日本国地下司令部の誕生です。のちにアンダーグラウンドと呼ばれる日本国は、地下に無数のトンネルを巡らせて国家を形成します。

人口わずか26万人の超戦闘国家日本は冷戦構造を巧みに利用しながら、地上を占領する国連軍にゲリラ戦を繰り返し、また反帝国主義を掲げて海外の革命や内乱にも参加。キューバ革命でもフィデル・カストロの要請を受けた日本国軍(UG軍)は竹内剣次大尉率いる小隊を派遣して、革命軍を助けたのです。

主人公の小田切は、地下司令部の山口司令官に面会。そして地下日本国が世界に誇る音楽家ワカマツの旧東京でのコンサートに同行後、元の世界に戻るためにUGの兵士たちと、非国民村と呼ばれる日の根村へ出発しますが・・・

どうでしょうか?物語の概要を聞いただけでもわくわくしませんか?小田切が地下司令部で読まされた歴史の教科書の一部を引用します。

もし、本土決戦を行わずに、沖縄をぎせいにしただけで、大日本帝国が降伏していたら、日本人は「無知」のままで、生命をそんちょうできないまま、何も学べなかったかもしれません。

MARCYは沖縄人ですから思わず「したいひゃあ」とうれしくなりましたね。

また少し長くなりますが、この教科書の結びの文も示唆に富んでいるので引用します。

われわれはどこの国の助けもかりずにいままで生きのびてきて、どの国にも降伏せず、どの国にも媚びず、どの国の文化もまねずに、すべての決定を、われわれじしんがくだしてきて、全世界に影響をあたえつづけています。

「いかなる意味の差別もない国はアンダーグラウンドの日本だけである」1972年に地下司令部をおとずれたアインシュタイン博士を団長とする国際視察団が発表したコメントです。

すべての差別は、勇気とプライドのないところに、世界にむかって勇気とプライドを示そうという意志のない共同体の中に、その結束と秩序を不自然に守るためにうまれるものです。

各ブロックで殺され死んでいった何千万という日本人のことを忘れてはなりません。これからもこの地下の中から世界にむけて、われわれの勇気とプライドを示していかなくてはいけません。敵にもわかるやりかたで、世界中が理解できる方法と言語と表現で、われわれの勇気とプライドを示しつづけること、それが次の時代を生きるみなさんの役目です。

もう読むしかないって思いませんか?

小田切の遭遇する戦闘シーンや、ワカマツのオールド東京でのコンサートシーンなど、村上龍さん特有のしつこいくらいの情景描写も読みごたえ抜群ですよ。続編の「ヒュウガウィルス」も含めて「5分後の世界」ワールドを堪能してください。MARCYのお薦めです。

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